研究紹介

脳機能画像解析のための深層生成モデル

脳の活動パターンを測定する脳機能画像は,問診によって行われる精神疾患の診断を補佐し,客観的・定量的な基準を与えられるものと期待されています.しかし,データの収集には莫大なコストがかかり,世界的に大きなデータセットであっても数十人~千人分のデータしかなく,深層学習を用いたビッグデータ解析を用いることが容易ではありません.また性別や年齢による脳の見た目上の個人差は,病気と関連があるとされる活動パターンよりもよほど顕著であり,よほど工夫をしない限り,誤った根拠を使って診断をしてしまいます.例えば自閉スペクトラム症は男性に多いため,男性的な特徴(脳の大きさなど)と,病気の原因を混同してしまいます.また,脳機能画像を撮影する機材は病院ごとに異なっており,その機材の違いも,大きな混乱を招くことが知られています.

そこで,ベイズ的深層学習の一種である深層生成モデルを用います.脳機能画像の原因として,活動パターンを想定し,活動パターンの原因が精神疾患であると考えます.もう一つ別の原因として,年齢や性別といった個人差や機材の環境差があるというモデル化を行います.活動パターンは刻々と変化しますが,疾患や個人差は変化しません.すると,脳機能画像に現れる様々な情報が,どの原因に紐付けられるのか,データから自動的に学習され,精神疾患と個人差・環境差を高い精度で区別することができるようになります.

たった150人の小規模なデータであっても,深層生成モデルは既存の特徴抽出に依存したヒューリスティックな手法よりも高い精度で診断を下すことができました.またそれだけでなく,どの部位が原因であるのか可視化することができるほか,性別や年齢による診断精度の偏りを補正することができました.

本研究は総務省 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)の委託を受けて行われました.

  • Takashi Matsubara, Koki Kusano, Tetsuo Tashiro, Ken’ya Ukai, and Kuniaki Uehara, “Deep Generative Model of Individual Variability in fMRI Images of Psychiatric Patients,” IEEE Transactions on Biomedical Engineering, 2020. (accepted) (link)
  • Koki Kusano, Tetsuo Tashiro, Takashi Matsubara, and Kuniaki Uehara, “Deep Generative State-Space Modeling of FMRI Images for Psychiatric Disorder Diagnosis,” Proc. of The 2019 International Joint Conference on Neural Networks (IJCNN2019), Budapest, Jul. 2019. (link)
  • Takashi Matsubara, Tetsuo Tashiro, and Kuniaki Uehara, “Deep Neural Generative Model of Functional MRI Images for Psychiatric Disorder Diagnosis,” IEEE Transactions on Biomedical Engineering, vol. 66, no. 10, pp. 2768-2779, 2019. (link) (arXiv)
  • Takashi Matsubara, Tetsuo Tashiro, and Kuniaki Uehara, “Structured Deep Generative Model of FMRI Signals for Mental Disorder Diagnosis,” Proc. of The 21st International Conference on Medical Image Computing and Computer Assisted Intervention (MICCAI2018), Granada, Sep. 2018, pp. 258-266. (acceptance rate 372/1,068=0.348) (link)
  • Tetsuo Tashiro, Takashi Matsubara, and Kuniaki Uehara, “Deep Neural Generative Model for fMRI Image Based Diagnosis of Mental Disorder,” Proc. of The 2017 International Symposium on Nonlinear Theory and its Applications (NOLTA2017), Cancun, Dec. 2017, pp. 700-703, 5169.

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